時代波動に応える新しい「まちつくりへの道」

再開発や地域再生の専門家たちの間では、聞く、理解する、専門的知見を加える、そして課題者の気持ちの本質を理解するということが、今なお基本姿勢として重要だと語られているように思います。これは今なお重要な姿勢であることに間違いはありませんがしかし、現代人にとって意識段階の急転換に当たる過度的な時期であるために、思わぬ反応が起きることを想定し、発生するかも知れぬ誤解や錯視に着目しつつ、あらゆる展開を進める覚悟が必要なように思われます。自らの魂の叫びに気付かない状態の権利者の声や、必要な視点に届かないもどかしさ故の、ねじれ現象が様々な形で起きるからであります。


 我が国がグローバリズムの激変に見舞われて数年を経過した今、漸くその背景に見合った人間の心が持つ課題に対応しようとする働きが、まちつくり制度の上にも見受けられるようになって来ました。その本質的な要請に従って意図されるところを活かすには、変化が本質的であるために今までの経験や事例を探って見ても、本題に至るには充分でないことを恐れます。まちつくりにおける「市民の心の奥底にある真の気持ち」とこれを「政策化する思考行程を管理する道」について、検討すべき領域の巾を我々が思いつく巾からはその倍ほども広げる必要が予感され、この巾を構成する諸要素の組合せ上の課題や技術化こそが、新しい時代の専門的課題として取り上げられる必要があるように思われます。


 時代の波動は、民主的社会の主権者であるべき市民の自らの意志決定によって、市民の自決権によって決定の責任を問われつつも、凡ての市民の活きる環境である都市の凡てのことを決定していけるのかと言うことを、問いただしているようだと受け取るべきではないでしょうか。まちつくりや再生事業に献身するものにとってこの質問は、多くの諮詢と様々な反省を呼ぶものであります。勿論、この質問をそのまま是認することはできませんが、それでも先ず、我々のできる小さなことでありながら、先行きには大きく拡がる在るべき施策の何たるかについて考える必要を感じれば心は逸ります。


 政府によってまちつくり施策の重要性と変化の方位が示された今年こそは、この命題に応える現場人にとっての重要な最初の一年であります。再開発に献身しようとするものにとって、この命題は必要な巾だけでなく尽きせぬ奥行きを持っています。 市民自らの手によって都市の将来に責任ある展開方位を決定することは、今のところ大きな困難性をもっているとしても、必要領域の専門家たちが市民の真の状態とその心を理解するために現実的詳細な部分についても、必要な現実的な理解が進み、究極の智慧とも言うべき愛によって専門家と市民が結ばれた時、そして更に、これらを結ぶ有用な具技術手段が準備できたとき、本物には至らないけれども半歩でも前進できる重要な道になるような気がするのであります。


 この市民の自力決定に必要な、専門的な知見と智慧を市民の手によって必要な小範囲だけでもいいから使いこなせるような技術的な道の整備は決して容易ではありませんが、弛まぬ意図ある準備と計画的展開とによって効果的な展開手段として成立させたいと願うものであります。この年を、まちつくりにおける市民の内的葛藤の整序に貢献する技術開発の第一歩として成功裡に踏み出せる一年としたいと心から思います。

以上
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