福祉のまちつくり!





 
  4.介護保険制度と福祉情報のネットワ−クづくり

介護保険制度の導入(2000年4月)によって、行政が福祉サービスの内容を決定する措置制度から、福祉サービスの供給者である事業者(市町村)と福祉サービスの利用者との契約へと転換しました。サービス利用者が、自らの意思と責任において、利用したいサービスを選択するという方式です。つまり市場原理の導入です。

介護保険制度を必要とする社会的背景として、
@ 要介護高齢者の激増によって、老人保健福祉のための財源が乏しい。
A 家族を犠牲にした介護から、家族に代わって社会が介護責任を負うという介護の社会化を推進する。
B 従来の老人福祉制度と老人医療制度の矛盾や問題の解決を図る。
C 医療の拡大化と福祉の普遍化の進展に伴い、保健、医療、介護の総合化、一本化が求められる。
といったことが議論されてきました。

介護保険制度は、顧客満足、効率化、競争といった一般企業では当たり前のことが、これらの概念と無縁であった福祉サービスの世界に、サービスの質を高めるインセンティブが導入されたということです。
これに伴い三つの課題が論議されています。一つは、福祉施設の在所者であれ在宅者であれ、利用者(あるいは家族)がサービスを選択するためには、選択の裏づけとなる「情報提供」の課題。二つ目は、社会福祉法人、医療法人、NPO、民間企業などの福祉サービス事業活動のあり方や組織運営の方法など「福祉経営」の課題。三つ目は、医療の拡大化と福祉の普遍化のなかで、社会福祉分野の専門職と医療分野の専門職との「連携」の課題です。

福祉のまちつくりにとっても、この三つの課題の具現化が求められます。福祉のまちつくりの主役は、地元の自治体と地元住民です。自然環境、気候風土、生活習慣、生活価値観、社会基盤整備の程度、医療など各種施設の存在状況など、地域によってまちまちです。中央主導の一律的なまちつくりは、地元の実態とは合致しません。東京経由でない独自のまちつくりが求められます。

国や都道府県が福祉の事務を市町村に移譲しつつあるのは、地域の実情に合わせた施策を期待する一例です。現場の事情に精通した人たちが主役にならなければ、ぎくしゃくしたものになります。外部の専門家の仕事は、地元の人たちが気づかない'資産'の指摘、技術的な支援などでしょう。

上記の三つの課題の中でも、市町村にとって「情報提供」が最優先の課題ではないかと思います。どこにどんな施設(病院、保健施設、老人施設、介護サービスビジネス機関など)があって、どのようなことをしてくれるのか、経費はどの程度なのか等々が開示されないと、サービス受給者にとって、自己責任による自己選択ができません。

同時に、医療、看護、介護の地域ネットワークが必要です。つまり、福祉サービスの供給者たちが受給者たちのプライバシーに神経を使いながら、受給者たちのニーズに対応する情報共有の仕組みを構築することも肝要でしょう。その際、医師の判断だけで他の専門職が動くのではなく、医師、看護婦、精神保健心理士、介護福祉士などの専門職の人が同じテーブルで協議する仕組みが重要です。

福祉サービスの分野には、市場原理だけで片付けられない問題もあります。現在、65歳以上の高齢者のおおよそ8%強が介護を要する人です。そのうちの6割くらいが在宅の要介護者(全く寝たきり、ほとんど寝たきり、寝たり起きたり)で、残りは病院入院者や施設在所者です。

在宅介護を柱とした介護保険制度では、所得の低い人にとって、十分な介護サービスを受けるだけの余裕がありません。そのために、痴呆や寝たきりの高齢者を介護しなければいけない家族は筆舌にあらわせない苦労をしています。このような高齢者を受け入れる特別養護老人ホームは、空きを待つ人が何年も待たされています。介護保険制度では、措置制度のときに比べて、自己負担や保険料が重くなりますから、応益と応能とを組み合わせた料金体系になるように、公費による下支えが望まれます。公費を投入した特別養護老人ホーム等の増設も福祉のまちつくりの一つの要素でしょう。


   <目次>

1.健康でいつまでも活動できる手立てが「福祉」

2.歩きやすいまちつくり

3.バリアフリ−からユニバ−サルデザインへ

4.介護保険制度と福祉情報のネットワ−クづくり

5.「福祉」を意識しなくなれば本当の福祉社会

 
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